広島県の公立高校入試を調べていると、「自己表現」という言葉を目にします。中学生や保護者の方からは、「面接とは何が違うのか」「何を話せばいいのか」「部活動で目立った実績がないと不利なのか」といった質問を受けることがあります。
広島県公立高校入試の自己表現は、話し方のうまさを競う試験ではありません。自分がどのような人なのか、これまで何を考えて行動してきたのか、これから何をしたいのかを、自分の言葉や方法で相手に伝える試験です。
令和9年度(2027年度)の広島県立高等学校入学者選抜でも、自己表現は引き続き実施されます。一般枠では、一般学力検査、調査書、自己表現の比重が6:2:2となっており、自己表現も合否に関わる評価の一つです。
この記事では、広島で中学生の学習や高校受験を支える明光義塾の視点から、自己表現の目的、当日の流れ、何を話せばよいか、評価されるポイント、本番に向けた準備方法まで解説します。
広島県公立高校入試の「自己表現」とは?


広島県公立高校入試の自己表現は、令和5年度入学者選抜から導入された仕組みです。一般的な面接のように質問へ順番に答えるだけではなく、受検生が自分自身について伝え、その内容をもとに検査官から質問を受けます。
「自己表現」と聞くと、「人前で上手に話さなければならない」と思うかもしれません。しかし、広島県教育委員会が示している目的と評価の観点を知ると、何を準備すればよいのかが分かってきます。
自己表現は何を見るための試験?
広島県教育委員会は、自己表現を通して「自己を認識する力」「自分の人生を選択する力」「表現する力」の3つを見るとしています。
つまり、「どれだけ立派な経験をしてきたか」を競う試験ではありません。自分の得意なことや苦手なこと、これまで力を入れてきたこと、そこで考えたこと、将来や高校生活について自分がどう考えているかを相手に伝えることが中心です。
例えば、部活動で県大会に出場した生徒だけが評価されるわけではありません。毎日の練習を続けた経験、苦手だった役割に挑戦した経験、仲間との関わり方を変えた経験なども、自分について伝える材料になります。大切なのは実績の大きさではなく、その経験を自分がどのように受け止め、何を考えたかです。
自己表現はどのような流れで行われる?
令和9年度の基本方針では、自己表現は個人ごとの面談形式で実施され、1人当たりの実施時間は10分以内とされています。検査官は学校ごとに2人から3人の範囲で設定され、検査官1人当たり15点満点で評価します。
現在公開されている広島県教育委員会の令和8年度自己表現Q&Aでは、10分以内の内訳として、自己表現を行う時間が5分以内、その後の質問への回答が3分以内、入退室が2分以内と示されています。令和9年度の基本方針では実施時間が10分以内であることまで公表されているため、令和9年度の詳しい実施方法については、今後公表される最新情報も確認しておきましょう。
自己表現が終わると、検査官から話した内容について質問があります。質問への回答も評価の対象です。そのため、原稿を5分間話せれば終わりではなく、「なぜそう考えたのか」「その経験から何を学んだのか」と聞かれても、自分の言葉で答えられる状態を目指す必要があります。
高校入試の合否に自己表現はどのくらい影響する?
令和9年度の一般枠では、一般学力検査、調査書、自己表現の配点の比重は6:2:2です。自己表現は調査書と同じ比重であり、「学力検査ほど比重が大きくないから、合否にはほとんど関係ない」とは言えません。
一方で、自己表現だけに時間をかければよいわけでもありません。一般枠では学力検査の比重が最も大きいため、5教科の受験勉強を進めながら、自己表現の準備も並行して進めることが大切です。
また、特色枠を設けている学科やコースでは、一般学力検査、調査書、自己表現の比重を各高校が定めます。志望校が決まったら、その学校の入学者選抜実施内容を確認し、自分が受ける学科やコースで自己表現がどの程度の比重になるのかを把握しておきましょう。
自己表現では何を話せばいい?テーマの決め方


自己表現の準備で多くの受検生が最初に悩むのが、「何を話せばいいのか」という点です。結論からいうと、全員が同じテーマを話す必要はありません。
大きな大会での入賞や生徒会長の経験など、目立つ実績がなくても問題ありません。自分が実際に経験したことから、自分の考え方や変化が伝わるテーマを選ぶと、質問を受けたときにも自分の言葉で答えやすくなります。
自己表現で話す内容に決まりはない
広島県教育委員会は、自己表現で話す内容に決まりはないと示しています。自分の得意なこと、これまで取り組んできたこと、高校入学後の目標など、自分自身を伝えられる内容を選べます。
志望理由を必ず話さなければならないわけでもありません。ただし、志望校でやりたいことが自分の経験や将来の目標とつながっているのであれば、それは自己表現の中で話しやすい材料になります。
反対に、インターネットで見つけた例文を少し変えただけでは、検査官から質問されたときに答えに詰まったり、内容が浅くなったりしやすくなります。自己表現では、きれいな文章を作ることよりも、「これは自分の経験で、自分はこう考えた」と言える内容を持つことが重要です。
中学校生活で取り組んできたことから考える
テーマが思いつかない場合は、中学校生活を振り返るところから始めると考えやすくなります。部活動、委員会、学校行事、勉強、係活動、友人との関わり、家庭で続けてきたことなど、日常の中にも自己表現につながる経験はあります。
例えば、部活動でレギュラーになれなかった経験でも、「悔しかった」で終わらず、その後に練習方法を変えた、仲間のサポートに回った、できない理由を考えるようになったという変化があれば、自分の考え方を伝えられます。
勉強についても同じです。数学が苦手だったため毎日問題を解く時間を決めた、英単語を覚える方法を自分で変えた、定期テスト後に間違えた問題を解き直すようになったなど、結果だけでなく行動の変化に目を向けると、自分らしいテーマが見つかります。
自分の得意なこと・成長したことから考える
自己表現では、「得意なこと」を単に紹介するだけではなく、それを通して自分がどのような人間なのかまで伝えられると内容に厚みが出ます。
例えば、「人と話すことが得意です」だけでは、その人らしさは十分に伝わりません。「クラスで意見が分かれたとき、双方の話を聞いて共通点を見つけることを意識した」のように、実際の場面を加えると、自分の特徴が伝わりやすくなります。
また、「以前はできなかったことが、今はできるようになった」という成長も重要な題材です。人前で発表するのが苦手だった、提出期限を守れなかった、分からない問題を質問できなかったという経験でも、その後に何を変えたのかまで話せれば、自分自身をどのように見て行動したかを示せます。
高校入学後の目標や将来やりたいことから考える
高校入学後に頑張りたいことがある場合は、それを自己表現の中心にする方法もあります。ただし、「高校で勉強を頑張りたい」「将来は人の役に立ちたい」だけでは、ほかの受検生と内容が似やすくなります。
なぜその目標を持ったのかを、自分の過去の経験とつなげることが重要です。例えば、中学校で理科の実験に興味を持ったことから高校でも理系科目を深く学びたい、部活動で後輩を支えた経験から高校でも周囲と協力できる人になりたい、というように、きっかけがあると自分の話になります。
まだ志望校や高校生活のイメージがはっきりしていない場合は、先に高校について知ることも必要です。学校選びで迷っている方は、広島で志望校が決まらない中学生へ|偏差値だけで選ばない高校受験の進路相談も参考にしてください。
広島県公立高校入試の自己表現で評価される3つのポイント


自己表現では、「自己を認識する力」「自分の人生を選択する力」「表現する力」の3つが全校共通の観点として評価されます。現行の評価方法では、それぞれの観点を3点、4点、5点で評価し、4点が基準となります。検査官1人当たりの合計は15点満点です。
5分間話すことだけを目標にすると、出来事の説明が長くなり、自分の考えや変化が十分に伝わらないことがあります。3つの観点を意識しながら、自分の経験と考えを言葉にしていきましょう。
「自己を認識する力」|自分自身を理解できているか
「自己を認識する力」では、自分は何が好きなのか、どのような人間なのかなど、自分自身について認識できているかが見られます。
長所だけを並べる必要はありません。「自分は最後まで続けられる性格です」と話すのであれば、そう考える理由となる経験が必要です。また、自分の苦手な面を理解し、それに対してどのように行動しているかも、自分自身を知っていることの表れになります。
自己表現を考えるときは、「自分の特徴は何か」だけで終わらせず、「なぜそう思うのか」「それが表れた出来事は何か」まで掘り下げてみてください。
「自分の人生を選択する力」|自分で考えて目標を決めているか
「自分の人生を選択する力」では、自分の夢や目標、やりたいことについて、自分で考え、自分の意思で決めることができているかが見られます。
保護者や先生から勧められた進路を選ぶこと自体が悪いわけではありません。ただ、「親に言われたから」「先生に勧められたから」で話が終わると、自分がどう考えたのかが伝わりません。
「最初は家族に勧められて興味を持ったが、学校説明会に参加して自分もこの環境で学びたいと思った」というように、周囲から得た情報をもとに自分でどう判断したかまで話すことで、自分の意思が見えます。
「表現する力」|自分の考えを相手に伝えられるか
「表現する力」では、自分自身のことや自分の意見を、相手に理解してもらえるように伝えられているかが見られます。
難しい言葉を使う必要はありません。むしろ、自分が普段使わない表現を無理に入れると、質問を受けたときに話しにくくなることがあります。「何があったのか」「そのときどう考えたのか」「何を変えたのか」という流れが相手に伝わるように話すことが大切です。
資料や作品などを使う場合も、持ち込んだ物そのものが評価を上げるのではありません。それを使って自分の考えや経験をどう伝えるかが重要です。
話し方の上手さや実績だけで評価されるわけではない
自己表現に不安を感じる生徒の中には、「人前で話すのが苦手だから不利になるのでは」と心配する人もいます。しかし、広島県教育委員会は、話すことが苦手であること自体が直接不利になるものではなく、礼儀作法や話し方のテクニックを見る試験ではないと示しています。
部活動、生徒会、ボランティアなどの実績そのものも評価の対象ではありません。賞状や作品を持ち込むことはできますが、「賞を取ったから加点される」という仕組みではありません。
例えば同じ大会出場の経験でも、「大会に出ました」で終わるのと、「思うような結果が出ず、自分に足りないものを考えて練習方法を変えました」と話すのでは、伝わる内容が異なります。大切なのは肩書や結果ではなく、その経験の中で本人が何を考え、どう行動したかです。
自己表現の対策は何をすればいい?本番までの準備方法


自己表現の対策は、完成した原稿を最初から作ろうとすると進みにくくなります。まず自分の経験を振り返り、そこから話したい出来事を選び、考えたことや成長したことを言葉にしていくと、話す内容を決めやすくなります。
また、本番では自己表現の後に質問があります。原稿を読む練習だけではなく、質問を受けて答える練習まで行うことが重要です。
まずは自分の経験を振り返る
最初に、中学校生活で印象に残っている出来事を書き出してみましょう。成功した経験だけを探す必要はありません。失敗したこと、悔しかったこと、苦手だったこと、途中で考え方が変わったことも自己表現の材料になります。
塾で生徒と話していると、「特に話せることがない」と答える生徒でも、質問を重ねると題材が見つかることがあります。毎日続けていること、以前よりできるようになったこと、友人や家族から言われて印象に残っていることなども振り返ってみてください。
この段階では、5分間の文章にしようと考えなくてもかまいません。まずは自分にとって意味のある経験を見つけることが先です。
「経験・考えたこと・成長・高校でどう生かすか」でまとめる
話したい経験が決まったら、「どのような経験だったか」「そのとき何を考えたか」「その経験で自分がどう変わったか」「高校生活やこれからにどう生かしたいか」という順番で考えてみましょう。
例えば、「文化祭の準備で意見が合わず苦労した」という経験なら、出来事だけを説明するのではなく、「最初は自分の意見を通そうとしていたが、相手の理由を聞くことで考えが変わった。その後は全員が納得できる方法を探すようになった。高校でも周囲の意見を聞きながら行動したい」とつなげると、その人の変化が伝わります。
この順番で考えると、自己表現で評価される3つの観点にもつながります。自分を振り返ることで「自己を認識する力」が表れ、今後どうしたいかを考えることで「自分の人生を選択する力」が表れ、それを相手に伝えることで「表現する力」につながります。
5分以内で伝えられる内容にまとめる
自己表現は、話したいことをすべて詰め込めばよいわけではありません。現行の運用では自己表現の時間は5分以内です。内容を増やしすぎると、出来事の説明だけで時間を使い、自分が何を考えたのかを十分に話せなくなることがあります。
まずは一つか二つの中心となる経験に絞り、「自分について何を伝えたいのか」が分かる内容にします。練習では実際に声に出して時間を計り、5分ぎりぎりではなく、少し余裕を持って話し終えられるか確認しておくと、本番で言い直す場面があっても慌てにくくなります。
一度書いた文章を短くする場合は、同じ意味を繰り返している部分や、出来事の細かな説明が長くなっている部分を見直します。短くするときも、自分の考えまで削らないよう、「何をしたか」より「何を考えたか」を残すことを意識してください。
想定質問を使って自分の考えを深掘りする
自己表現の後には、検査官から話した内容について質問があります。質問への回答も評価対象になるため、ここまで含めて練習しておく必要があります。
練習では、「なぜそれを始めたのですか」「一番大変だったことは何ですか」「そのとき別の方法は考えましたか」「その経験を高校でどう生かしたいですか」といった質問を、家族や先生から投げかけてもらうと効果的です。
答えに詰まった質問があれば、なぜ答えられなかったのかを一度考えてみましょう。その経験を選んだ理由や、そのときの気持ちを振り返ることで、自分が本当に伝えたいことが見えてくる場合があります。
丸暗記ではなく自分の言葉で話す練習をする
原稿を一字一句覚える方法は、一見すると安心できそうですが、自己表現ではおすすめしません。途中で言葉を忘れたときに止まりやすく、質問されたときも原稿にない内容へ切り替えにくくなるためです。
なお、令和7年度入試から自己表現カードはなくなりましたが、自分で作成した原稿を持ち込むことはできます。ただし、広島県教育委員会は、持ち込んだ原稿をそのまま読むだけでは自己表現の趣旨に合わないとしています。原稿を読むことを前提にするのではなく、自分が伝えたい内容を確認するために使うとよいでしょう。
覚えるのであれば文章そのものではなく、「最初に伝えたいこと」「経験」「そこで考えたこと」「成長したこと」「高校でやりたいこと」という話の順番を覚えます。言葉が少し変わっても、自分が伝えたい内容が変わらなければ問題ありません。
練習を重ねるときも、毎回まったく同じ言い回しにする必要はありません。自分の経験について質問されても話せる状態になっていれば、本番でも相手の反応を見ながら自分の言葉で伝えやすくなります。
広島県公立高校入試の自己表現は早めの準備が大切


広島県公立高校入試の自己表現は、直前に5分間の原稿を作るだけの試験ではありません。自分がどのような経験をして、そこで何を考え、これからどうしたいのかを言葉にすることが求められます。
令和9年度の一般枠では、一般学力検査、調査書、自己表現の比重が6:2:2です。自己表現の準備は必要ですが、同時に5教科の学習や日々の学校生活も大切です。受験直前になって自己表現だけに多くの時間を使わなくて済むよう、中学1年生や2年生の段階から自分の経験を振り返る習慣を持ち、中学3年生になったら志望校と学習状況を見ながら準備を進めていきましょう。
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